正直に申し上げるのは、年齢に関係なくこの話題が難しいからです。六十代、七十代の親密さについて、多くの方が口を閉ざします。恥ずかしさではなく、どう話せばよいかわからない、というのが実情に近いのです。
箱根のご夫婦旅行で、六十七歳の男性が宿の湯から出てきて、奥様になかなか言い出せなかった言葉があったそうです。「最近、あまり自信がなくて」。この一言を口にするのに、彼は三年かかりました。
身体の変化は、二人の問題になる
六十代以降、親密さの形は必ず変わります。勃起の変化、閉経後の身体の変化、内服薬の影響、手術の後遺症。これらは、避けられない現実です。
ここで多くの方が間違えるのは、「これは自分の問題だ」と一人で抱え込んでしまうことです。男性は男性で、自分の機能低下を恥じる。女性は女性で、身体の変化を見られたくないと思う。そして、お二人とも、会話を避けたまま、関係が少しずつ冷えていきます。
親密さは二人の間で起きることです。ですから、身体の変化も二人の話題です。「一緒にどうしていくか」を共有できるかどうかで、関係の深さが決まります。
話を切り出す、三つの入り口
- 医師の受診の話から。「最近、先生にこう言われてね」と、事実から始めると恥ずかしさが和らぎます。薬の副作用や検査結果は、会話の入り口として自然です。
- 共通の不安から。「年齢と一緒にいろいろ変わるよね」と、お互いの共通項として話す。責める言葉ではなく、同じ船に乗っている感覚を先に置きます。
- 希望の形から。「これからも、ゆっくり一緒にいたいから」と、目的を先に伝える。変化の話ではなく、関係の話にする方が、お互いが防御しにくくなります。
治療の相談は、できれば一緒に
泌尿器科、婦人科、内科。六十代以降の親密さに関わる治療は、決して珍しいものではなくなっています。ED治療薬、ホルモン補充療法、骨盤底筋トレーニング。いずれも、昔よりずっと身近です。
ここで提案したいのは、可能なら、一度だけでもお二人で医師の話を聞かれることです。本人だけが医師と話し、結果をパートナーに説明する形だと、伝言の途中で誤解が生まれやすいのです。
「二人の問題として聞きに来ました」と医師に伝えるだけで、説明の仕方が変わります。恥ずかしさもありますが、一度経験されると、次からは自然になります。
親密さは、挿入だけではない
六十代以降の親密さで、一番大事な認識の転換がこれです。若い頃は、性行為の中心に挿入があることが当たり前でした。けれど、六十代、七十代の身体は、別のリズムを持つようになります。
肩をマッサージする時間、一緒にお風呂に入る時間、手をつないで眠る時間、朝起きて顔を見てから立ち上がる時間。これらはすべて、親密さの一部です。お二人がそれで満たされているなら、それは立派な性の形です。
那須の温泉宿で再婚後初めて過ごされた七十歳の女性が、こうおっしゃいました。「肌が触れていることだけで、安心するということが、この年になってわかったのです」。
新しいパートナーとの最初の夜
五十代以降で新しいお相手と関係を持たれる場面では、事前に身体のことを一言お伝えしておく方が、ずっと安心です。「こういう治療中で」「こういう手術の跡があって」「こういう不調があって」。
恥ずかしいことではありません。むしろ、大人同士の敬意です。お相手も同じように、何かを抱えていらっしゃるはずです。お互いに一言ずつ先に開示すると、その後の時間がずっとリラックスしたものになります。
「今日は、手を握るだけの日」
長年連れ添ったご夫婦でも、再出発のお二人でも、これからは「今日は、手を握るだけの日」という合意を持たれることをおすすめします。
体調の良い日もあれば、そうでない日もあります。親密さを義務にせず、その日の体と心に合わせて形を選べる関係は、ずっと長持ちします。これを恥ずかしがらずに口にできることが、六十代以降の愛情の、一つの成熟の形だと思います。
最後に、静かな一言
親密さについて話すことは、勇気が要ります。しかし、話さずにいることの方が、実は関係を冷やします。「あなたと、長くいたい」。その一言が先に言えれば、身体の話はあとから自然にほぐれてきます。
若い頃の情熱ではなく、六十代の穏やかな熱を、一緒に育てていかれてください。